見出し画像

マダイ《展示動物解説》

桂浜水族館の生きもの観察をもっとおもしろく、詳しく‼️
こちらでは水槽周りで紹介しきれない生きものたちの魅力を掘り下げていきます❗️

※生体の健康状態や展示替え等によって展示終了となりご覧いただけない場合もあります。ご了承くださいませ。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

◆標準和名 マダイ
◆学  名 Pagrus major
◆分  類 スズキ目タイ科

◆展示解説文(土佐弁)
磯釣りや延縄、定置網でとれるけんど、養殖もしよらぁね。
タイは魚の王様じゃき煮てよし、焼いてよし、さしみもよし。「腐っても鯛」ぜよ!

◆標準語訳
磯釣りや延縄、定置網でとれるけど、養殖もしてるよ。
タイは魚の王様なんで煮てよし、焼いてよし、さしみもよし。「腐っても鯛」だね!

◆解説
タイの中のタイなので「真鯛」!
日本人にとってはなじみの深い魚で、古くから祝いの席や神事においておめでたい魚、縁起の良い魚として重宝されてきました。

大きいものであれば全長が1mほどにもなりますが通常は50㎝ほど、体は鮮やかな赤色で腹は銀白色をしており体の側面には青色の小さな斑点が点在します。またわかりにくい部分ではありますが尾ビレの後縁が黒くなるのもマダイの特徴のひとつです。
マダイの赤色はエビやカニといった甲殻類の殻に含まれるアスタキサンチンという赤色の色素によるもので、これらを多く食べることで表面にアスタキサンチンが蓄積し鮮やかな赤色が現れています。

日本では北海道から九州にかけての日本海・太平洋沿岸に分布し、稚魚や幼魚は浅い海の砂泥域などに生息し、成魚は水深30~200mの岩礁や砂礫底などに生息します。
寿命は長く20年ほど生きるといわれていますが、生息環境によっては長くも短くもなり、飼育下ではさらに長生きすることもあるといわれています。

マダイはいわゆる高級魚のひとつで天然マダイは高値で取引されていましたが、近年は養殖も盛んに行われているため比較的手に入りやすい魚にもなっています。
マダイといえば鮮やかで美しい赤色の体が印象的ですが、天然マダイに比べて養殖マダイは浅い水深で生活するため日焼けをし体が黒ずみやすくなっています。そのため日焼け防止として生簀をさらに深く沈めたり遮光幕で覆ったりするといった対策がとられています。
桂浜水族館では過去に全長が1mに迫る大きさのマダイを飼育していましたが、そのマダイはマダイらしからぬ黒い体をしていました。それでも大水槽ではまるで主のように存在し貫禄もすごかったと記憶しています。

過去に大水槽で飼育していた1mほどのマダイ。

ちなみに、天然マダイは鼻の穴(鼻孔)が2つあるのに対し、養殖マダイはその2つがつながって1つになっているものが多く存在します。とはいえ、養殖ものでも鼻孔が2つあるマダイもいるとのことですしこの点だけで天然ものか養殖ものかを見分けるのは難しいとされています。

マダイは白身魚の代表ともいえる魚で、あっさりした味わいと歯ごたえのいい食感がたまりませんね。
食べ方は刺身、焼き物、煮物、蒸し物、揚げ物、鍋物、汁物と幅広く、どんな調理をしてもおいしく食べることができます。赤ちゃんの生後100日ごろに行うお祝いの儀式「お食い初め」においてもマダイは重宝されてますね。

立派な体に美しい色、味もおいしく縁起の良いマダイはまさに魚の王様ですね!

おめでたい席のマダイ。

◆タイ(鯛)が登場することわざ(一部)
【腐っても鯛(くさってもたい)】

「優れたものやもともと立派なものは状態が悪くなってもその価値を失わない」という意味ですね。タイは高級魚なので多少傷んでも他の安い魚と同じ価値にはならないという考えが由来とされており、さすがは魚の王様と感じざるを得ませんね。ただし本当に腐ったタイを食ったら腹は壊すと思います。

【鯛も鮃も食うた者が知る(たいもひらめもくうたものがしる)】
「人の話を聞いても書物をたくさん読んでも、実際に経験した人でなければ物事の本質は理解できない」という意味ですね。タイもヒラメもそのおいしさは食べた者にしかわからない。私たちも魚の食べ方を紹介するためには本を読み漁るだけではなく実際に食べてみなければその味は伝えられませんし、魅力についても実際飼育に携わり本物にふれ観察しないことには気づけないことも多々あります。何事も体験をすることは大切ですね!

【鯛も一人はうまからず(たいもひとりはうまからず)】
「どれだけおいしいごちそうでも、ひとりで食べてはあまりおいしさを感じられない。食事はみんなで食べるからこそおいしく感じられる」という意味ですね。人生の中でひとり黙々と食べる時間も必要ですが、大切な人や仲間たちとともに食事を楽しむ時間も人間関係をもっと豊かにしていく上では必要なことですね!

河豚にもあたれば鯛にもあたる(ふぐにあたればたいにもあたる)
「運が悪い時は普段安全であるはずのものでも害になることがある」という意味ですね。フグは毒を持つため危険ですが、毒を持たないタイであっても運が悪いともしかしたら傷んだものを選んでしまい中毒を起こしてしまうこともあるかもしれません。人生、いつ何時災難に見舞われるかはわからんもんですね。ちなみにタイの骨はかなり丈夫なので誤って飲み込むと危険です。

◆スタッフコメント
この記事を書くにあたってことわざもいろいろ調べてみたのですが、初めて目にしたものも多くいかにタイが日本人にとってなじみの深い魚なのかを改めて感じました。
大きくても小さくても王者の風格を醸し出すマダイ、かっこいいですね!

飼育学芸員 フジ