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ニホンウナギ《展示動物解説》

桂浜水族館の生きもの観察をもっとおもしろく、もっと詳しく‼️
こちらでは水槽周りの魚名板で紹介しきれなかった生きものたちの魅力を掘り下げていきます❗️

※生体の健康状態や展示替え等によって展示終了となりご覧いただけない場合もあります。ご了承くださいませ。

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◆標準和名 ニホンウナギ
◆学  名 Anguilla japonica
◆分  類 ウナギ目ウナギ科

◆解説
おそらく誰もが知る魚のひとつですね。
一般的に「ウナギ」といわれている魚はこの種のことを指します。

ウナギと「ウナギ」と名のつく魚

「ウナギ」と名のつく魚はいくつかおりますが、ウナギの仲間(ウナギ目ウナギ科:オオウナギヨーロッパウナギアメリカウナギなど)なのでウナギとつくものもいれば、ウナギの仲間ではないのに名前にウナギとつけられている魚もいます。
その一例として、
深海に生息するヌタウナギ(ヌタウナギ目ヌタウナギ科)、
淡水に生息するタウナギ(タウナギ目タウナギ科)やヤツメウナギの仲間(ヤツメウナギ目ヤツメウナギ科:スナヤツメ、カワヤツメなど)、
ほかにもデンキウナギ(デンキウナギ目デンキウナギ科)などがいます。
これらはみな細長い体をしており、その見た目がウナギに似ているという理由でこういった名がつけられているのだと思います。
(ウナギ以外にもそういった名前の付け方されてる魚多くてややこしいですね・・・💦〇〇ダイとか特に。)

ニホンウナギの一生

ニホンウナギの成長していく過程は実に壮大で、名前に「ニホン」とついているため日本周辺で生まれているのかと思いきや産卵はなんと日本から離れたマリアナ諸島(サイパン島やグアム島、テニアン島などからなる大西洋西部にある島々)の西方海域で行われていることがわかっています。

大きさ1.6㎜ほどの卵から生まれた直後の幼生はプレレプトセファルスと呼ばれ、そこから少し成長したものはレプトセファルスと呼ばれます。
レプトセファルス(またはレプトケファルス)は透明な葉っぱのような形をしており葉形幼生とも呼ばれます。親とは全く異なる姿ですがウナギのみならずアナゴやハモ、ウツボなども幼生はこの姿をしています。

レプトセファルスは北赤道海流や黒潮などの海流に乗って日本近海などにやってきます。自力で泳ぐことができない幼生は海の中を浮遊しながら育ち、沿岸や川の河口あたりにたどり着くと成魚に近い姿をした稚魚に変態(形や状態が変わること)します。この稚魚はまだ透明な体をしておりシラスウナギと呼ばれます。
シラスウナギは川をさかのぼりながら水棲昆虫やエビ類などを食べて成長し、それとともに体の色も黒っぽくなっていきます。黒っぽくなったものは「クロコ」とも呼ばれます。
成長したものは小魚なども食べるようになり川で数年から十数年過ごします。川で過ごすうちに体は黄色味を帯び、この姿のものは「黄ウナギ」とも呼ばれます。
成長し性的に成熟したものは産卵のため川を降りて海へ向かいます。そのときに体は金属のような光沢のある色に変化し、この姿は「銀ウナギ」と呼ばれます。
海に下りたものは産卵場へ向かいそこで卵を生んでその生涯を終えるとされています。
ちなみに、ウナギのように川などの淡水域で成長し海に下って産卵する魚を降河回遊魚(こうかかいゆうぎょ)といいます。

食文化と絶滅危惧種

ウナギと言えば真っ先に頭に浮かぶのは「土用の丑の日」だと思いますが、生息数は減少していると考えられており2013年に環境省が、2014年には国際自然保護連合 (IUCN)がニホンウナギを絶滅危惧種に指定しました。
ウナギ養殖という言葉を耳にしたことある方は多いと思いますが、これは卵から育てているのではなく河口付近にやってきた天然の稚魚(シラスウナギ)を捕まえて養殖場で育てるというものです。人の手によってふ化させたウナギを育てて親にし、その親から生まれた卵をふ化させる完全養殖は2010年に初めて成功したと報じられ今でも研究が続けられていますが、まだ実用化には至っていません。
稚魚を捕まえるシラスウナギ漁は資源管理のため許可を受けた者しかやることはできず無許可で捕った場合は罰則の対象となります。しかし悪質な密漁も後を絶たないことから罰則の強化も行われています。

蒲焼きとして食べられることが多くその味も非常においしいものですが、減少していると考えられている魚でもあります。
食文化を守っていくことは大切ですがそのせいで動物たちを生息数回復ができないほどまで追いやることなどあってはなりません。文化もウナギも守りつつこの味を後世に残していくためには今を生きる私たちがウナギについての理解を深めることが大切だと思います。ウナギの生態や現状を知り、川を上ってきたウナギが暮らしやすい環境を整えたり守ったり、代替品とされている魚を食べてみたり、ほかにも適切な方法で獲られたウナギを食べるようにするなどひとりひとりの力は小さくても大勢が一丸となって実践すれば変えていけることもあるはずです。

ウナギには毒がある?

ウナギには毒があります。
「焼いたウナギはあるのになぜ刺身はないんだろう?」と疑問に思ったことがある方もいらっしゃるかと思いますが、理由はこれです。
ウナギの血液にはイクチオヘモトキシンという毒があり、血液を大量に摂取すると吐き気や下痢、皮膚の発疹、呼吸困難などを引き起こします。
ただし摂取したら高確率で死に至るほどの毒ではなく、60℃で5分の加熱をすることにより毒性はなくなります。とはいえ、さばく際は傷口や目に入らないよう注意する必要がありますね。


まだら模様のニホンウナギ?

ウナギと言えば通常は背面が黒くて腹が白いものですが、中には不思議な体色の個体も存在します。
例えば白黒のまだら模様の個体や黒と黄のまだら模様のものなど。
これらの模様は色素異常が原因と考えられており、数十万匹に1匹の割合でこのようなウナギが現れるとされています。
自然界では目立つため天敵に見つかりやすく生き残るのは難しいとされています。

◆スタッフひとこと
ニホンウナギって身近なんですけど知られてないことも多い魚なんですよね。日本では昔から食べられていた魚なのにどこでどう生まれているのかは長らく不明で、産卵場所が明らかになったのは21世紀に入ってからですし、親が川を降りてからどのようなルートで産卵場まで行くのかはまだわかっていません。自然界でどれだけ生息数を減らしているのかについてもはっきりとはわかっていませんし、養殖されているものが天然の稚魚を捕まえて育てているものだということも実はあまり知られていないのではないかと思います。
水槽内ではよくひっくり返って寝ている姿を見かけて大丈夫かとひやひやしますし、同じ水槽に2匹で入れたらケンカするのに3匹以上だとお互いけん制し合っているのかあまり争いは起きず、なんなら同じ筒の中に仲良く入っていることもありますし、生態も気持ちもわからんことだらけなんですよね。
これだけ身近なのに謎だらけで何なんだこの魚は!?って思うわけですよ(笑)
しかしこの謎な魚を私たちの世代で謎なまま地球上からいなくさせるわけにはいきませんし、私ももっと知識を深めつつ発信していければと考えてます。

【魚名板イラスト(館内展示)】
せーいち(魚類・両生爬虫類担当飼育員)
フジ(飼育学芸員)

【note本文、スタッフひとこと】
フジ(飼育学芸員)


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