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あなたはどうしてこの場所に?

「水族館になんでカピラおんのー??」
カピバラ舎でお掃除をしているとき、そんなお声をよく耳にします。
ほんと、休みか事務仕事でカピバラ舎に近づかない日を除けば聞かない日はないんじゃないかってくらい耳にするひとことですね。 

けどたしかに不思議といいますか、疑問に思いますよね~。
水族館に入ってお魚を見てウミガメに会い、オットセイやトド、アシカといったヒレを持つ海生哺乳類の横を通りボエボエ鳴くペンギンたちを過ぎればその先にいるのがなんとカピバラ。
そう、本館を通ってトドプール横を抜けるコースだと一番最後に会う水族館の仲間がカピバラたちなんです。
不思議ですよね。
これでもかってくらい水に特化した体の持ち主たちを見てきて最後に4足歩行で陸上か温泉のイメージばかりが浮かぶカピバラかーい!?って。

でも、これには大きなわけがあるんです。
今回はそういった部分をメインに、カピバラたちの深堀をしていきます。


ちなみに、「カピパラ」ではなく『カピラ』が正しい名前です。


カピバラですが、野生の個体は南米大陸の北東部に分布し水辺の草原や森林で群れをつくって暮らしています。
齧歯類(げっしるい)と呼ばれるグループに分類されており、その中で最も大きな体をしているのがカピバラです。
カピバラは世界最大の齧歯類!

📖齧歯類(齧歯目)って?
哺乳類(哺乳綱)の中のグループのひとつで、最近は「ネズミ目(もく)」と言う呼び方のほうが一般的になりつつあります。
このグループにはネズミ、リス、ムササビ、ヤマアラシ、テンジクネズミ(モルモット)、ビーバー、ヌートリアといった動物たちが含まれ、立派な前歯(門歯)が一生伸び続けるのが特徴です。

カピバラは齧歯目テンジクネズミ科に分類されており、その大きさから別名「オニテンジクネズミ」とも呼ばれます。(細かい分類は省いております)

齧歯目に分類される仲間たちのほんの一例。


そんなオニテンジクネズミことカピバラ、水辺の草原などで暮らしておりますが・・・水とカピバラでパッと思い浮かぶのは寒い冬、温かい温泉にものすごく幸せそうな顔をしながら入る姿。やはりそのイメージが強いですね。
「あんな感じで温泉に入る動物なんてあまりいないし、温泉の湯も水だからカピバラは水繋がりで水族館にいるのだ!!」
という持っていき方をしたいところですが、当館には残念ながら大きな池はあれど温かいお風呂に入れてあげられるような設備はありません。

しかし、そういった飼育下の限定された環境の話を抜きにしてもカピバラが水族館にいるれっきとした理由はあるんです。順を追ってみていきましょう!

まずはカピバラの得意なことから。
食べること?
こちらの眠気を誘うくらい気持ちよさそうに寝ること?

それもありますが、「泳ぐこと」もそのひとつです。
桂浜水族館では夏場、暑さ対策としてカピバラ舎の池に水をはっていますが泳ぎ回る姿を度々見かけます。泳ぎが結構うまいんです。
そして泳ぎを得意とさせている体のつくりもいろんなところに現れています。

実はカピバラたちにとって水の中というのはとても大切なところ。
天敵に襲われたとき逃げ込む先は水の中ですし、排せつや交尾も水の中でします。
なんと水中で5分ほど息を止めることができるとされています。
勝負しても勝てる自信はありません・・・
しかしそんなカピバラもずっと水中で過ごすことはできませんし、かといっていきなり外に出たら敵に見つかってしまうかもしれません。
そこでカピバラたちは情報を得るのに必要な器官だけを水の外に出せる顔のつくりをしています。
カピバラのお顔にご注目!
呼吸をするための鼻、周囲を見渡し音を聞くための目と耳、これらが顔の上の方で横一直線の位置に並んでいます。

カピバラの独特な顔にはこんな秘密があったんですね!


また、前後の肢をよく見てみると指の間に水かきがあるのがわかります。
これも泳ぐために必要なものですね。

前肢の指は4本、後肢の指は3本!それぞれの指の間には立派な水かきが。


ここらまでは水の中で役立つ体のつくりでしたが、次は水から出たあと重要となってくる部分についてです。

皆さんはカピバラの体にふれたことはありますか?
ふれたことある方であればご存じかと思いますが、見た目以上に硬いんですよね。さわり心地的には茶色いほうきや松葉が近いんでしょうかね?

この硬くて長い毛、実は弾力もあり体をふるわせるだけで水分を飛ばすことができます。
この毛のおかげでカピバラは水から出たあと体が乾きやすくなっているんですよね。

これを書いている今は真冬ですが、この先夏の暑い日に当館を訪れる予定の方がいましたら池で泳ぎ終わった後のカピバラたちの様子を見てみてください。日光と毛の性質によって結構早く体が乾いていく姿をご覧いただけるかと思います(たいていは乾ききる前にまた暑くなって泳ぎに行っちゃうんですけどね・・・💦)

暑い夏のある日の様子。泳ぐときは結構がっつり泳いでいます。


このように、カピバラは見た目に反して水に特化した体をしている動物なんです。
これらのことから当館ではカピバラたちを「スイゾク」として迎え入れともにお仕事をしています。
(ちなみにですが、水から最も遠い動物もいくつか飼育しております。何でしょうかね?)

一番最初に書かせていただいた疑問に対する答えが出ましたので今回はこのあたりで終わらせていただきます。
食べているものの話とか歯の話とかまだまだ書きたいことはたくさんありますのでそれらはまたの機会に書かせていただこうと思います!


飼育主任学芸員
フジ


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