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コバンザメ《展示動物解説》

桂浜水族館の生きもの観察をもっとおもしろく、詳しく‼️
こちらでは水槽周りで紹介しきれない生きものたちの魅力を掘り下げていきます❗️

※生体の健康状態や展示替え等によって展示終了となりご覧いただけない場合もあります。ご了承くださいませ。

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◆標準和名 コバンザメ
◆学  名 Echeneis naucrates
◆分  類 スズキ目コバンザメ科

展示解説文(土佐弁)
ふといサメやエイに頭の吸盤でひっついちゅうぜよ。ウミガメやクジラにもひっつくそうぜよ。
めっそうまいもんじゃないけんど食べる人もおるらしいねや。

標準語訳
大きいサメやエイに頭の吸盤でひっついてるよ。ウミガメやクジラにもひっつくそうだ。
あまりおいしいものではないけど食べる人もいるらしいよ。

◆解説
コバン「ザメ」という名前で一見サメのような見た目をしていますがサメの仲間ではありません
分類上、サメは軟骨魚類というグループに属しています。このグループは骨格のほとんどが弾力性のある軟骨で構成されており、他にもエイやギンザメという魚がこのグループに分類されています。
一方、コバンザメは硬骨魚類というグループに属します。こちらは骨格が硬い骨である硬骨で構成されており、マグロ、タイ、アジ、ウナギ、マンボウなどなどかなり多くの魚がこちらに分類されています。
ちなみに、同じく名前に「サメ」とつくチョウザメという魚もいるのですが、こちらも見た目が似ているだけでありサメの仲間ではありません。
以前、別の記事でタイの仲間ではないのにタイと名のつく魚について書かせていただきましたが魚ってこういうの多いんですよねホント💦

コバンザメの「コバン」の部分は、頭の上にある小判のような見た目をした吸盤に由来します。
コバンザメは大型のサメやカジキ、ウミガメ、クジラなどにぺったりとくっついていることの多い魚ですが、この吸盤がくっつくとなかなか取れないほど強力なので貼り付かれている動物が速く泳いでも振り落とされずくっついていることができます。
なぜそのようにくっつけるのか?
この吸盤には隔壁と呼ばれる板状のヒダがあり、普段は後ろに倒れているのですがくっつくときはそれが垂直に起き上がります。それによってくっつく面の内側が真空に近い状態となり強くくっつくことができます。

コバンザメの頭の吸盤。横にいくつも並んでいる線のようなものが隔壁です。ちなみにこの吸盤は背ビレが変化したものといわれています。

コバンザメだけで泳ぐこともありますが、先述の通りサメやカジキ、ウミガメやクジラなど大型の動物にくっつきながら生活をします。
このような生活にはメリットが多く、例えばくっついている大型の魚がエサを食べればそのおこぼれをもらうことができますし、大きな動物にくっついているため他の動物に襲われるという心配もほとんどありません。
安全な場所で身を守ってもらいながらごはんまでもらえる、コバンザメからするととてもいい生活ですね!
しかし、くっつかれる側からするとただただ邪魔な存在なのではないでしょうか?
コバンザメ1匹や2匹であればギリギリ我慢できたとしても、たくさんくっついてこられると不快感はすごそうですね・・・。とはいえこれはあくまでその様子を見た私たち人間の感想です。

このように、一方は利益を得ることができますがもう一方は利益も害も受けない関係を片利共生(へんりきょうせい)といいます。

人間からすると「なんてずるい生き方なんだ!」と思える関係かもしれませんが、コバンザメたちが暮らすのはいつ命を落とすかわからない過酷な環境。その環境の中で1日でも長く生き延び種を存続していくためにこういった生き方にたどり着きそれによって今でもコバンザメという魚が存在している、野生で生きる動物としてはとても素晴らしい生存戦略だと思いますね!

ちなみに、2024年8月現在桂浜水族館本館内にあるカメ池では全長1mほどになるコバンザメたちを複数飼育しておりますが、ここのコバンザメたちは野生ほど身に危険を感じないからかカメたちにくっつかず悠々と泳ぎまわる姿をよく見かけますし、お客さんがカメたちにあげようとしたエサやり体験用の魚をカメたちよりも早くその合間を縫って食べに来ることもあります。
本能的にウミガメやプールの壁面にくっついていることもありますが、アクティブな瞬間をご覧いただける時もあります。

ウミガメにくっつくコバンザメ。人間でいうと仰向けで頭を上げた状態。しんどくないのかな・・・?
プールの壁面にくっつくコバンザメたち。

◆スタッフコメント
コバンザメが泳ぐ姿って結構好きなんですよね!
普段はあまり見られないような姿を見られたって嬉しさがありますし、サメではないのにサメを思わせるようなしなやかな動きに惹かれます!
ちなみに、私は食べたことないんですがコバンザメって食べることもできるんですよね。食用にするイメージが全然と言ってもいいくらいありませんが、刺身や煮つけにして食べるとおいしいみたいです。
市場などで見かけたら買ってその味を確かめてみたいものですね(^^)

飼育学芸員
フジ

泳ぐコバンザメ。