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恵みの海、土佐湾

先日ですが、よさこい祭りが開催されましたね。
高知の夏の風物詩よさこい祭り

私は水族館に就職したのが2018年でかれこれ6年ほど高知に住んでいるのですが、よさこいを見たのって実はまだ2回目なんですよ・・・💦

1回目は入社した年ですね。
この時は見に行こうと思って行ったわけではなく、借りてた本の返却日がたまたまお祭りの本番1日目だったんですよね。普段停めてた駐車場はどこも満車、本1冊返すために数十分かけてなんとか空いてるパーキングを見つけ、せっかくだし本場のよさこいってものを見てみようと返した後にちらっと見てみました。大音量で流れる音楽に鳴子の音、踊り子さんたちの楽しそうな表情がとても印象的でしたね!

そこからしばらくは行かず、今年は家族からの誘いもあって久しぶりに見に行ってきました。
本番2日目の夜だけでしたが高知の熱気に溢れたアツい夏を体感してきました!!

と、ここまで私の思い出話になりましたが、よさこいといえばよさこい節の歌詞に

「おらんくの池にゃ 潮吹く魚が泳ぎよる」

という部分があります。

当館内にある池の名前もおらんくの池ですが、こちらにも出てきた「おらんくの池」。
おらんくの池には「おれの池(わたしの池)」という意味があります。
では高知の人たちが指すおらんくの池とはどこのことなんでしょうか?
それは高知県の太平洋岸にある土佐湾のことを指しています。

高知海岸から見た土佐湾。

土佐湾は室戸岬から足摺(あしずり)岬に至るまでの湾で太平洋に向けて弧状に開いています。

濃い青の部分が土佐湾です。

土佐湾の海底は大陸棚が広がり沖に向けてすり鉢状に深くなっていきます。大陸棚の外縁からは急激に深くなり四国南方の海底にある南海トラフへと続きます。

海底にある細長い溝状の地形のうち、水深6,000m以上のものは『海溝』、水深6,000m未満のものは『トラフ』と呼ばれます。


📖大陸棚(たいりくだな)
大陸や島の周辺にあり、水深200mほどまで続く傾斜が緩やかな海底のことをいいます。

室戸岬から見た高知沖。
足摺岬周辺の海。


土佐湾の沖には黒潮が流れており、それに乗ってマグロやカツオといった大型の魚が日本近海へやってきます。
また黒潮そのものに魚が多いというわけではありませんが、海の底から栄養を湧き上がらせるためそれに動物プランクトンが集まり、それらをエサとする生きものが集まり、さらにそれらをエサとするより大型の生きものが集まって豊かな海が形成されています。

黒潮は南に大きく迂回することがたまにあり、これは黒潮大蛇行と呼ばれています。
本格的な観測が始まった1965年から現在に至るまで大蛇行は6回起きており、2017年8月に始まった大蛇行は7年経った現在も継続、その期間は過去最長を更新しています。
黒潮大蛇行は漁業や気候などに影響を与えます。

土佐湾を含む高知の海は黒潮の影響を強く受けており、全国的に見ても魚の数が非常に多い場所とされています。
また高知県沿岸にはサンゴ群集域が存在し、沖には宝石珊瑚として知られるアカサンゴなどが生息しており世界有数の産地となっています。
エサとなる生物が多くいるためハンドウイルカやオキゴンドウ、ハナゴンドウ、カツオクジラといった鯨類も生息しており大昔は捕鯨で栄え、現在は県内数ヶ所でホエールウォッチングを楽しむことができます。
ちなみに、よさこい節にあった「潮吹く魚」とはクジラのことですね🐳

こういった環境がすぐそこにある高知県ではカツオのたたきウツボ料理、イワシの稚魚であるドロメや室戸沖で獲れるキンメダイ、土佐清水市で水揚げされるゴマサバ(清水サバ)の刺身チャンバラ貝の塩ゆでといった海の幸を活用した食文化が発展し、これらによって人々の生活は支えられて来ました。

高知の人たちに豊かな海の恵みをもたらしてくれる土佐湾。
人々が「おらんくの池」と親しみを込めて呼ぶ所以はこういったところにあるのだと思います。

飼育学芸員
フジ

桂浜から見た土佐湾。
室戸岬周辺から見た土佐湾。

追記
この投稿でちょうど100本目となりました!
いつも読んでくださる皆さま、本当にありがとうございます。
これからもたくさんの生きもの情報や水族館のこと高知のことを発信していきますので今後ともよろしくお願いいたします。