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ペンギンたちの冬

2024年になってからこれが最初の更新になりますね。
皆様はいかがお過ごしですか?

今シーズンの冬は暖冬といわれていますが、それでも気温が下がり冷たい風が吹くと寒いもんは寒い!❆

そう寒いといえば、よくイメージされるのがペンギン🐧
氷の上で並んでいる写真やイラストなんかはよく見かけますし、冷凍ものを扱う会社のトラックやアイスクリームなどのパッケージに描かれているのを目にする機会も結構あります。
お越しいただいたお客様からは「ペンギンたちは寒さに強くていいな~」なんてお声をいただくこともこの時期特に多いですね~。

このように、「ペンギン=寒いところ=寒さに強い」というイメージはとても強く世間に根付いているものだと思っています。

では実際のところどうなんでしょうか?

地球を赤道で半分に分けたとき、北側は北半球と呼ばれます。アメリカやアジア、ヨーロッパの国々にアフリカ大陸の半分よりやや多い国々、そして私たちの住む日本などはこちら側にあります。いちばん北には北極がありますね。
一方南側は南半球と呼ばれ、オーストラリア大陸や南アメリカ大陸の大部分にアフリカ大陸の半分よりやや少ない国々などがあります。いちばん南は南極ですね。
ペンギンの仲間は世界中に18種(※)いるとされていますが、そのすべてが南半球に住んでいます。(※諸説あり)

ペンギンの仲間18種を細かく分けてみるとこのようなグループ分けがされます。

コウテイペンギン属 2種
・コウテイペンギン(別名:エンペラーペンギン)
・キングペンギン(別名:オウサマペンギン)

アデリーペンギン属 3種
・アデリーペンギン
・ジェンツーペンギン(別名:オンジュンペンギン)
・ヒゲペンギン

フンボルトペンギン属(ケープペンギン属とも) 4種
・フンボルトペンギン
・ケープペンギン(別名:アフリカペンギン)
・マゼランペンギン
・ガラパゴスペンギン

マカロニペンギン属 7種
・マカロニペンギン
・キタイワトビペンギン
・ミナミイワトビペンギン
・シュレーターペンギン(別名:マユダチペンギン)
・スネアーズペンギン(別名:ハシブトペンギン)
・フィヨルドランドペンギン(別名:キマユペンギン) 
・ロイヤルペンギン

キガシラペンギン属 1種
・キガシラペンギン(別名:キンメペンギン)

コガタペンギン属 1種
・コガタペンギン(別名:フェアリーペンギン)


デフォルメですが、こんなペンギンたちが地球上で暮らしています。

これらのペンギンのうち、南極地域のすぐ外側にある亜南極と呼ばれる地域の島々にはアデリーペンギン属の3種やキングペンギン、ミナミイワトビペンギン、マカロニペンギンが暮らしていますが、そこよりもさらに南側、南極大陸で繁殖するのはコウテイペンギンとアデリーペンギンの2種のみです。寒さがイメージできる地域に住むペンギンって全体の1/3くらいなんです。

他のペンギンたちはオーストラリアの南部やニュージーランド、南アメリカや南アフリカの一部地域やこれら大陸と南極の間にある島々などに住んでいます。またガラパゴスペンギンは赤道直下のガラパゴス諸島で暮らしています。

このように寒いところってイメージの強いペンギンたちは半分より多い数が雪や氷に覆われた世界とは別のところにいるんですよね。

ではでは、ここからは桂浜水族館で暮らすフンボルトペンギンという種について少し触れていきたいと思います。

フンボルトペンギンは南アメリカ大陸のチリやペルーといった国々の沿岸地域に分布しています。
住んでいるところのすぐ近くをフンボルト海流(ペルー海流)という寒流が流れており、この海流がフンボルトペンギンの名前の由来にもなっています。

見た目はこんな感じです。くちばしの付け根あたりや目の周りがピンク色をしており(ここはむき出しの皮膚です)、胸のあたりに太い1本の帯模様があります。
ちなみにおなかの模様はみんなそれぞれ違う模様をしているため見かけた際はよく観察してみてください!(この個体(愛称:本丸)のおなかにはL字がありますね)

ペンギンの仲間の中では比較的温暖な地域に住んでいます。

日本も温暖な気候の島国なので国内のいろんな動物園さんや水族館さんでたくさんのフンボルトペンギンたちが暮らしており、国内で最も多く飼育されているペンギンでもあります。
野生では生息地の破壊や餌の減少などで絶滅危惧種に指定されていますが、日本で長く培われた飼育技術や環境が適していることなどから国内での繁殖率は高く、地球全体の生息数のうちおよそ1割が日本にいるなんてこともいわれています。

そんな私たちにとって身近ともいえるフンボルトペンギン、暑さにはそこそこ強いのですが寒さは苦手です。
いちおう、ペンギンの仲間は撥水(はっすい)・保温効果のある羽と厚い脂肪で寒さから体を守っていますが、ペンギンだから全く問題なしってことはなさそうですね。

ちなみに少し話は変わりますが、真冬にプールで泳ぐペンギンたちを見て「寒そう・・・」って体を震わすお客様をお見かけすることもたまにありますが、海水って意外と温かいんです。
私たちは普段ペンギンたちにごはんを与えるとき水で浸したバケツの中に入った魚をペンギン舎まで持っていきそれをあげているのですが、もう手が冷たいこと冷たいこと。あげ終わる頃には手が真っ赤になっています。
そんなときペンギンたちが泳ぐプールに手を入れるともうたまらないくらいのぬくもりを感じるんですよね(笑)
なのでずっとプールサイドに突っ立っているより海水の中にいる方が寒さから身は守れているような気もします(本人たちがどう考えているのかはわかりませんが)

雪の日だって寒さにも負けず!

長くなりましたが結論、
寒いところに住むペンギンもいるが、フンボルトペンギンは寒さは苦手!(※ちなみに暑過ぎも苦手)
ということになります。

これを読んでくださった皆様のお近くにある動物園や水族館で暮らすペンギンたちはこの冬どのように過ごしているでしょうか?
もし機会がありましたらそういった行動の観察も含めペンギンたちに会いに行ってみてください(^▽^)/
もちろん、当館も皆様のお越しをお待ちしております!

まだまだ寒い日が続くかと思います。
急に気温が上がっても体のバランスを崩しやすくなってしまうため皆様お体に気をつけてお過ごしください。


飼育主任学芸員
フジ

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