ペンギンたちの誕生日と名前の由来、一挙公開!
当館には2024年10月時点で25羽のフンボルトペンギンが暮らしており、それぞれに名前(愛称)があります。
左のフリッパーに名前が書かれた名札をつけており(写真の部分)、それを見ることで私たちは個体管理がしやすく、お客さんにはそこからも興味を持っていただけるようにしています。
そんなペンギンたちの名前ですが、名札に書かれた文字だけを見ると「なんでこの名前?」と思えるような名前の個体はそこそこいます。
ペンギンたちをご覧になられたお客さんからは「飼育員絶対テキトーに名前つけとるやろ(笑)」ってお言葉をいただく時もありますね。
いやいや、テキトーに名前をつけた個体なんていませんよ!!😅
・・・とはいえ、名前によってはパッと浮かんだ言葉を書いて箱に入れ引き当てたものをつけたのかって思われても仕方のないような名の個体がいるのもまた事実ですね。
そこで今回は当館のペンギンたちがなぜそんな名前なのかについて名前の由来や命名のルールなどをご紹介していきます!
また、画像内にペンギンたちの誕生日(卵から孵った日)も記載しておりますので、自分と同じ誕生日の個体はいるのか?記念日に生まれたペンギンはいるのか?などぜひ探してみてください!
◆2002年生まれ
ビッケ〈BIKKE〉
2007年に愛知県の水族館からやってきました。
ビッケは他の個体よりも体が小さく、当時向こうの水族館で「ちびすけ」と呼ばれ始めたのが「ちびっけ」になり最終的に「ビッケ」になったと言われています。
2022年に亡くなったエポという個体とペアを組んでおり、これまでに10羽以上のヒナを育てました。たくましいお母さんペンギンは2024年10月現在当館最高齢のおばあちゃんペンギンとなっていますが、毎日よくごはんを食べ元気に過ごしています。
◆2006年生まれ
シズカ〈SHIZUKA〉
「シズカ」という名前ですが性別はオスで、ペンギン団地内では5本の指に入るほど力の強く体格の良いペンギンです。気も強く他の個体の巣を襲撃することもある怖いもの知らずな性格ですね。
シズカが生まれた年はイタリアのトリノでオリンピックが開催された年ですね。
シズカの名前の由来は、この大会で日本人唯一の金メダルを獲得したフィギュアスケートの荒川静香選手にちなみます。
荒川選手の得意技イナバウアーはその年の流行語にもなりましたし、多くの小学生がまねしたことかと思います(笑)
2007年生まれのとべちゃんとペアを組んでいます。
◆2007年生まれ
とべちゃん〈TOBECHAN〉
「とべちゃん」でひとつの名前なので、敬称をつけると「とべちゃんちゃん/とべちゃんさん」になります。
それはさておき、とべちゃんは当館と愛媛県にあるとべ動物園さんとで卵の交換を行い、卵の状態で当館にやってきてから生まれた個体です。
出生地は桂浜水族館ですが、卵はとべ動物園さんで生まれたためそこの地名が名前になっています。
シズカとペアで気が強く、スタッフからは「最強(恐)夫婦」と呼ばれることもあります。
◆2009年生まれ
海海〈MIMI〉
海海と書いて「みみ」と読みます。
海海は一般公募によってつけてもらった名前で、雄大な海を2つ重ねて力強さを強調した名前となっています。その想いを背負って育ったからか、ごはんのときオス個体からも魚をぶん捕るほど力の強いペンギンに育ちました。
離れたところから投げた魚をキャッチするのがとても上手なので私は絶対的な信頼を置いています。けど他の個体を落水させてまで魚をぶんどるのは辞めたげてや・・・💧
2012年生まれのツルとペアを組んでいます。
桂〈KEI〉
海海と同じく一般公募によってこの名前をつけてもらいました。
桂浜の「桂」に由来します。
桂浜に由来していますが、読みは「かつら」ではなく「けい」です。
4月1日生まれなので、桂浜水族館と同じ誕生日ですね!桂が生まれたとき桂浜水族館は78周年でした。
2017年に生まれたよしだとペアを組んでいますがよしだは桂の息子・・・。
しかし血縁関係(親と子、兄弟姉妹など)のある個体同士がペアを組むことも少なくないためペンギンの世界では珍しいことではないのでしょうね。
ちなみにこういったペアは近親交配によるリスクを避けるため産んだ卵をニセモノ(擬卵)に替えるといった方法で繁殖を行わないようにしています。
◆2010年生まれ
ハク〈HAKU〉
いろんな理由によって親が育てられなくなったヒナを飼育員が育てる人工育雛によって育ちました。
ハクが生まれた2010年は大河ドラマで「龍馬伝」が放映された年でもあり、高知県ではそれに合わせて「土佐・龍馬であい博」というイベントが開催されました。
ハクの名前の由来は「土佐・龍馬であい博(はく)」の「はく」にちなみます。某映画に登場する小川の神様とは一切関係ありません。
私との相性は良好でいっしょに館内をお散歩することもありますが、他のスタッフには気を許しておらず威嚇したり噛みついたりするため畏怖の対象となっています。
2011年生まれのネネとペアを組んでいます。
◆2011年生まれ
ネネ〈NENE〉
ネネが生まれた2011年はNHK大河ドラマの「江〜姫たちの戦国〜」が放送されており、ネネの名前は豊臣秀吉の正室「ねね(高台院、北政所)」にちなみます。正室とは身分が高い人の本妻(正式な妻)のことですね。
ペアの相手はハク。ハクはグイグイと前に行くタイプですがネネはやや控えめで、ハクが巣から離れて別の場所へ行くときは「どうしようか?どうしようか?」とあたふたし、あとから渋々ついてくることがよくあります。
そんなネネですが、ごはんのときはハクより積極的になります。ただし飲み込むのがヘタクソで何度もくわえなおしているうちに横取りさせることは多々あります・・・。
ナカ〈NAKA〉
ナカもネネと同じく2011年生まれで、名前は大河ドラマ「江〜姫たちの戦国〜」の登場人物に由来します。ナカの名前は豊臣秀吉の母「仲(大政所)」にちなみます。
以前はリョウという個体とペアを組んでおり、ペンギン団地の巣の約半分を手中に収めていたことからシズカ・とべちゃんペアと並んで「最強夫婦」と呼んでいましたが、2023年初めにリョウが亡くなった後はしばらく独り身の時期を過ごしたのち年下のみやおとペアを組んで平和に過ごしています。
◆2012年生まれ
ツル〈TSURU〉
「なぜこの名前?」と言われることが多いペンギンの1羽ですね。
確かにペンギンやのにツルって…。鳥やったらなんでもよかったんかいな!?とつっこみたく気持ちもあることでしょうが、高知で「ツル」といえば有名なものがありますよね?
そう、「土佐鶴」!
ツルの名前は高知の地酒メーカーである土佐鶴酒造さんにちなみます。
海海とペアを組んでしますが、このペアは類は友を呼ぶということわざがぴったりなほど性格が似ており、とにかく横取りが大の得意。
体の大きい小さいや性別、子どもお年寄り関係なく魚をくわえている個体を見つけたら離れたとこからでも走ってきて魚をぶんどっていきます。もう容赦がない。そのくせツルはツル自身のためにあげた魚をなぜかよく捕られるという・・・なんでやねん。
カメ〈KAME〉
「なぜこの名前?」と言われることがもっとも多いペンギンの1羽だと思います。
ペンギン(鳥類)なのにカメ(爬虫類)、一体どんなつながりがあるんだろうか?
正しくは、カメの由来は爬虫類のカメではありません。
ツルと同じく高知の地酒メーカーが由来となっており、カメは亀泉(かめいずみ)酒造さんにちなんでいます。
この流れでお気づきかと思いますが、2012年に生まれたペンギンたちの名前はすべて高知の地酒メーカーが由来となっています。
2016年生まれのちくわとペアを組んでおり、このペアはなぜか高いところが好き(笑)
巣はペンギン団地でいちばん高いところにありますし、ごはんの入ったバケツを置く台にもしょっちゅう登っています。
真正面からの丸顔がかわいい個体の1羽だと思っていますので、カメを見つけたらぜひ正面顔を狙ってみてください!📷
イズミ〈IZUMI〉
名前は亀泉(かめいずみ)酒造さんにちなみます。
一見女の子らしい名前にも思えますが実はお酒由来の名前なんですよ。さすがは酒豪大国・高知!
とにかくわがままな性格で他の個体が近くを通ると突きにかかりますし奪い取った魚が自分好みでなければそのままポイッと捨てることもよくあります。
2017年生まれのぽんとペアを組んでおり、その仲は良好。2羽の娘であるテツのことは愛情いっぱいに育てました。
キク〈KIKU〉
花に関連した名前のペンギンは他にもいますが、キクの「キク」は高知の地酒メーカーである菊水(きくすい)酒造さんにちなみます。
温厚な性格をしており、2014年生まれのレンゲとペアを組んでいます。
頭の大きさに対して目がやや小さめなので他と比べると見分けがつきやすい方だと個人的には思ってます。
◆2014年生まれ
スミレ〈SUMIRE〉
2014年生まれのペンギンの名前は花にちなみ、スミレは花のスミレ(菫)にちなみます。
ごはんの時間になると真っ先に泳ぎに行くペンギンですね。水中からのお魚キャッチが得意なのかといえばそういうわけでもなく、どちらかといえば陸にいてくれる方があげやすい個体ですね。
レンゲ〈RENGE〉
ピンクのタグをつけ「レンゲ」という名前ですが、性別はオスです。
花のレンゲ(蓮華)にちなみます。
おなかの斑点が当館一多い個体なので、それを目印に探してみてください!
平和主義なペンギンで、似たような性格のキクとペアを組んでいます。
アヤメ〈AYAME〉
この年に生まれたペンギンにはオスメス関係なく花の名前がつけられており、アヤメは花のアヤメ(菖蒲)にちなみます。
しっかり者で、他の個体から横取りをすることはあまりありませんが、ごはんを待ってるペンギンたちの間を抜けたり貰いやすい場所に回り込んだりする要領の良いペンギンですね。
2016年生まれのはんぺんとペアを組んでいます。
余談ですが、菖蒲という漢字にはアヤメの他にも「ショウブ」という読み方があります。
アヤメはアヤメ科に分類される植物でショウブはショウブ科に分類される植物、同じ漢字でも分類は違うんですよね。ちなみに漢字で「花菖蒲」と書くハナショウブという植物もありますが、こちらはアヤメ科に分類されます。
◆2016年生まれ
かまぼこ〈KAMABOKO〉
2016年生まれのペンギンは練りものが名前の由来となっています。
私たちは「おでん組」とも呼んでますね。かまぼこをおでんに入れるのかどうかは意見が分かれるところですけど・・・。
かまぼこは、練りものの「かまぼこ」にちなみます。
普段はおとなしめですが、ごはんのときになると横取りをよくする個体ですね。今は2017年生まれのかしおとペアを組んでいますが、前の前に「たけち(2021年、兵庫県の水族館に搬出)」という別の個体とペアを組んでいたときはたけちが巣で卵を温めているときに自身の姉に当たる「リオ(2022年、香川県の動物園に搬出)」という個体と大々的に浮気をしており、たけちがいなくなった後はすかさずリオとペアを形成。リオがいなくなった後もそれほど時間を空けることなくかしおとペアになっていたため、本人が人一倍積極的なのかモテペンギンなのか、とにかくペア形成に積極的なペンギンです。
ちくわ〈CHIKUWA〉
練りものの「ちくわ」にちなみます。
ちくわというかわいい名前には合わないほど強気な性格で、ごはんのときいろんなスタッフが足やら手やらを噛まれてますね💦
カメとペアを組んでおりますが、カメの弟でもあります。
主導権はちくわが握っているようで、高い場所を見つけてはそこに上っていき鳴いてカメを呼んでいます。ごはん置台の向きを変え忘れようものならすぐその上に乗られて居座り、フンだらけにされてしまいます・・・。
はんぺん〈HANPEN〉
練りものの「はんぺん」にちなみます。
2016年生まれのオス3羽の中ではもっとも平和主義な個体ですね。
アヤメとペアを組んでおり、積極的な面もあるアヤメと基本控えめなはんぺんの程よいバランスで成り立っているペアでもありますね。
◆2017年生まれ
かしお〈KASHIO〉
2017年は高知出身の偉人にちなんだ名前がつけられています(一部例外あり)。
かしおはカシオ計算機株式会社(CASIO)創業メンバーのひとり「樫尾 忠雄」さんにちなみます。樫尾忠雄さん(1917~1993)は高知県長岡郡久礼田村(現在の南国市)出身で、4兄弟の長男として生まれました。
1946年に東京で樫尾製作所を設立、1957年には他の兄弟とともにカシオ計算機株式会社を設立しました。
ペンギンのかしおはおっとりした性格で、ペアの相手はかまぼこ。ここも似たもの同士のペアですね。
ぽん〈PON〉
人工育雛によって育ちました。
当時の担当飼育員が朝出勤したとき巣から落ちて排水溝で衰弱している姿を発見、急いで温め懸命にお世話をし今ではペンギン団地の中でも体が大きい部類の立派なペンギンに成長しました。
名前はその飼育員がつけたものですね。
昔は超甘えたで他のペンギンには見向きもせずいつも私のところに来てくれたのですがイズミとペアを組んでからは性格がガラッと変わって気は短く、近づこうものなら威嚇されるようになりました💧
どこか心の距離が遠くなったような…けど、これが人にべったりだったペンギンが自立して1羽のペンギンとなったという証であるのなら飼育員としては喜ばしいことですね。
飼育下とはいえ、ペンギンにはペンギンらしい生き方をしてほしいですし。
みやお〈MIYAO〉
小説家の「宮尾 登美子」さんにちなみます。
宮尾登美子さん(1926〜2014)は高知市出身で、代表作には「櫂」「寒椿」「一絃の琴」などが挙げられます。ベテランスタッフたちはみやおのことを「とみこ」と呼んでいます。オスなんですけどね・・・(;^_^A
ナカとペアを組んでいます。
ごはんのときは両方のフリッパーを広げながら足元にやってくる姿がとても印象的ですね。
よしだ〈YOSHIDA〉
元内閣総理大臣「吉田 茂」さんにちなみます。
吉田茂さん自身は高知出身ではありませんが、父が土佐国宿毛村(現在の高知県宿毛市)出身ですね。吉田茂さん(1878〜1967)は戦後日本の復興に尽力した首相で、大きな功績としてサンフランシスコ講和条約の締結が挙げられます。
ペンギンの方のよしだはベテランスタッフから「しげる」と呼ばれています。
ガツガツ系で、ごはんのときこちらの急所(内ももや膝裏などめちゃくちゃ痛いところ)をピンポイントで狙ってごはんを欲してくる要注意人鳥ですね😅
ひろた〈HIROTA〉
作曲家の「弘田 龍太郎」さんにちなみます。
弘田龍太郎さん(1892〜1952)は高知県安芸郡(現在の安芸市)出身で、代表作には「鯉のぼり」「浜千鳥」「叱られて」「金魚の昼寝」「雨」「雀の学校」「春よ来い」などがあります。
ペンギンのひろたはよしだの弟でもあるのですが性格は正反対で落ち着いた雰囲気のペンギンです。
スミレとペアを組んでいます。
◆2020年生まれ
本丸〈HONMARU〉
兵庫県にある兵庫ベンダ工業株式会社の取締役兼当館ペンギン団地(ヒョウゴベンダ ペンギン団地)オーナーの苗字に由来しています。
お城の本丸ではありませんし、読みは「もとまる」ではなく「ほんまる」です。
兵庫ベンダ工業株式会社さんは鉄鋼・非鉄金属の加工成形、土木・機械・電子回路設計、映像制作、イベント企画、運営業務、海洋・水産研究といった幅広い分野で活躍する会社で、当館もDX化をはじめ多くの面でお世話になっていますね。
ペンギンの本丸は2020年にはんぺん・アヤメの間に生まれたペンギンで、私が初めて成長を追わせてもらったペンギンでもあります。
小柄で、物静かな性格をしています。
◆2022年生まれ
テツ〈TETSU〉
命名はヒョウゴベンダペンギン団地のオーナーで、オーナーの会社「兵庫ベンダ工業株式会社」の基幹産業が鉄を扱ったモノづくりであることや、「てつ」という字には鉄鋼の『鉄』、徹底の『徹』、哲学の『哲』といった漢字が当てはまることからいろんな意味を込めて「テツ」という名前がつけられました。
ぽんとイズミの子で、お転婆なペンギンです。
歳が近いこともあってか本丸と一緒にいる姿をよく見かけるのですが、性格は正反対。さっきまで一緒にいたかと思いきや急に近くの本丸を小突くこともあってその時の気分が読みにくい個体でもありますね。
ごはんのときはよく鳴いてめしくれアピールをしてきます。それを通り越して最近は足を噛んでくることも・・・。
◆最後に
ペンギンたちの名前の由来、いかがでしたか?
名前の由来以外にも性格やペア情報などいろいろご紹介させていただきましたが、ペアのことは後の記事でもっと詳しく触れられればと考えていますのでいつごろかわかりませんが、出来ましたらそちらも併せて読んでいただけますと幸いです(^^)
飼育学芸員
フジ