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フンボルトペンギンの成長過程

当館で暮らすフンボルトペンギンたちの繁殖時期は1月から4月ごろです。

繁殖期に入るとメスの食欲は上がり、体がどんどん大きくなっていきます。
そして卵を産む数日前から食欲がなくなり巣にこもるようになります。

巣にこもったメスは最初に1卵目を産み、2,3日後に2卵目を産みます。
このとき産んだ卵が割れてしまったり無精卵で温めても一向に変化が見られなかったりする場合は少し期間を空けて新たに1卵(3卵目)を産みます。

メスが卵を産んだらオスメス(父母)交代で卵を温め、私たち飼育員は1週間から10日空けて検卵(けんらん)というものをします。
検卵とはその卵が有精卵か無精卵かを確認したり卵の成長具合を見たりすることで、定期的に行うようにしています。
無精卵であれば卵は孵りませんが、有精卵であってもそのすべてを孵すのかといえばそういうわけではありません。飼育動物として管理している以上、むやみやたらに繁殖させればよいというものではありませんし、血統が偏ってしまうのもよくありません。飼育スペースの問題などもあります。しかし生んですぐ卵を取り上げるとペンギンたちにも子孫を残すという意思があるため新たに卵を産みます。
それを繰り返すと母体に大きな負担となるため卵の形をした偽の卵、擬卵(ぎらん)とすり替えそれを抱いてもらうようにします。
(無精卵であってもそのまま放っておくと中身が腐ってしまうため擬卵に替えます)

卵が有精卵で孵すことができる場合はとにかくその卵を慎重に扱い、検卵をしながら成長の様子を確認するようにします。
順調に育っていても途中で成長が止まってしまうこともありますし、親たちが入れ替わる際に巣から落ちて割れてしまうこともあります。
そうならないよう細心の注意を払いながら飼育業務にあたります。
母親が卵を生んでから約40日、無事育った卵からヒナが誕生します。

ヒナが孵る前日の卵。
誕生したてのヒナ。

ヒナは90g前後で生まれ、手のひらにすっぽり収まるほどの大きさです。
ヒナが生まれてからも両親は交互にヒナを温め、ごはんをあげます。
ヒナが食べるごはんは親鳥が食べて消化した魚で、親鳥が口を開けるとヒナはその口に自身のくちばしを突っ込んで吐き戻しを食べます。

ごはんの様子。

これを繰り返し、個体差はありますが1か月で1㎏ずつくらいのペースで大きくなっていきます。
1か月半ほどで少しずつ巣の外に出るようになり、2か月ごろには自分で泳ぐようにもなります。ヒナは生まれたときモコモコの羽(綿羽)が全身を覆っているのですが泳ぎ出す少し前から子の羽が抜けて成鳥(大人)たちと同じ質感の羽に変わります。ただし模様は成長たちとは異なり、この姿のときは亜成鳥と呼ばれます。
亜成鳥になればひとりで泳ぐこともできますし行動範囲も増えてきます。そして巣離れもするようになりますが、私が成長を見てきたペンギンたちはみな巣離れしても定期的に巣に戻ってきて親と仲良く過ごしてましたね。
ただ、いつまでも親に頼ることはできないので巣離れをしたあたりから成鳥たちと同じ魚を食べる練習を始めます。

綿羽をまといつつ、亜成鳥の羽も顔をのぞかせている姿。
亜成鳥。

始めは小さな魚から少しずつ、それが食べられるようになれば大きめの魚に切り替え、口の中に入れて食べることや飲み込むことを覚えてもらいます。
始めたころは強制的に入れる感じですが少しずつ覚えてきてくわえさせるだけで飲み込むようになり、やがては見せるだけでくわえて飲み込むようになります。
ひとりでごはんを食べられるようになれば他の成鳥たちと同じようにごはんをあげ、取られないように動くすべなども身に着けてもらいます。

そのようにして亜成鳥の姿で心身ともに成長したペンギンはいよいよ換羽を迎え、羽がすべて抜け替われば晴れて大人(成鳥)の仲間入りをします。

このようにしてペンギンたちは育っていきます。

成鳥。


そして今日はあるペンギンの誕生日。
今から2年前の2022年6月7日、
桂浜水族館のヒョウゴベンダ ペンギン団地に新たな命が誕生しました。

そのペンギンの成長を追ったアルバム。

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