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「新たな場所で生きる動物たち」

〈動物愛護週間6日目〉
◆一般家庭からやって来た動物たち

桂浜水族館には他の動物園・水族館からやってきた動物や当館で生まれた動物、飼育員が調査研究、展示目的で採集してきた動物などが暮らしておりますが、ごく一部、一般家庭からやって来たような動物もいます。

こういった動物たちは飼い主さんが高齢や引っ越しなどによってその個体の飼育が難しくなり周りにも引取人がいなかった場合や、飼い主さんが死亡したことによって行き場を失った場合などに保護という形で水族館にやってきます。

語弊のないように書いておくと、一般家庭で飼育を継続できなくなった動物であれば何でもかんでも受け入れているわけではありません。

いくつか理由はありますが、最たるものとしては簡単に飼育者の義務を放棄できる場所がそこらにあると、安易な気持ちで動物を飼い始め思い通りに行かなければすぐ手放す無責任な飼い主を増やすことにもつながるという懸念があるからです。
水族館や動物園が伝えていくべきは終生飼育の徹底。しかし「簡単に動物を手放せる場所」と認識されれば元も子もありません。

かといって、いかなる場合でも断固受け入れ拒否!自分の責任なのであとは自分で考えてくださいと突き放してはなりません。
中には本当に最後の手段として救いの手を求める人もいるかもしれませんし、例外なく拒否すれば救えたはずの命を見捨てることになります。

ここをどう判断するのかは難しいところです。
難しいところではありますが、動物たちに罪はありません。
動物たちが最善の道で生きられるよう飼い主さんとやり取りを重ね、保護すべき条件をすべて満たした場合のみ対象となる動物とそこにかかる権利の全てを引き受けるようにしています。

このようにしてやってきた動物たちは水族館という新たな場所で私たちと共に過ごし、その種のおもしろいところや魅力、動物飼育の現状などについて訪れたお客さんたちに発信しています。

人はそのとき健康でもいつ何時怪我をしたり病気になったりするかはわかりませんし、動物と暮らしていた場合、故意ではなく不測の事態で飼育の継続が難しくなることもあるかもしれません。

だからこそこれから飼育を始めようと考えている動物のことは何年くらい生きるのかや何を食べるのか、どういった飼育法が最適なのかなどについてよく知っておかなければなりませんし、いざというときに備えてお世話の引き継ぎをしてもらう身近な人の理解も得ておく必要があると思いますね。
最終手段としての保護施設はあるといえど、動物たちが頼れるのは覚悟を決めてその命を預かった飼い主さんだけです。

2024年9月24日、諸事情により一般家庭からやってきたチリメンナガクビガメの水槽展示を開始しました。
水族館に来る前は「ぽち」という名前で飼育されていました。
当館でも「ぽち」の愛称を引き継ぎ、ともにこの種のことや動物飼育のあり方について伝えていければと思います!


飼育学芸員
フジ

⚠️注意⚠️
・一般家庭で飼育ができなくなった動物の引き取りを行っているかどうかは各園館の方針によって異なります。
・いきなり持ち込んだり勝手に送りつけたり、施設の敷地内に捨てたりする行為は絶対にやめましょう。
・飼育できなくなった動物は絶対に野外へ逃さないでください。
・動物の遺棄は犯罪です。