はたらく飼育員 〜4月19日(飼育の日)〜
飼育員、動物園や水族館で動物たちを相手にするお仕事です。
動物たちのごはんを作っている、お掃除をしている、ごはんをあげているなど、よくイメージされる仕事内容はこういったものかと思います。
しかしお客様の目につかないところではどういった仕事をしているのでしょうか?
何となくいろんな仕事してそうとイメージする方も多いと思いますが実際はどうなのか、本日4月19日は飼育の日なので、桂浜水族館ではたらく私たち飼育員のお仕事について紹介していきます!
その前に、そもそも「飼育の日」とは?
4(し)1(い)9(く)の語呂合わせから4月19日がその日となっており、飼育係の仕事を通して動物園や水族館に興味を持ってもらおうという日です。
動物園、水族館はレジャー施設や娯楽施設と捉えられがちですが、法律上は博物館ひとつであり社会教育施設としての位置付けがなされています。
珍しいお魚が見れる!
楽しいショーやトレーニングが見れる!
もちろんそういった楽しんでいただける部分もありますが、生きものを見て自然に興味を持っていただいたり理解を深めたりしていただくきっかけづくりの場でもあります。
前置きが長くなってしまいましたが、ここからは私たち飼育員のお仕事について触れていきます!
※すでに長文ですが、この先さらに長くなります。
なので目次からご興味のある項目へ飛んでください🙇♂️
◆基本業務
飼育員の基本業務は「掃除」「調餌(ちょうじ)」「給餌」。
どれも言葉の最後に「じ」がつくので『3つの「じ」』とも言われますね。
・掃除
1つ目は掃除。
動物たちが暮らす鳥獣舎でフンをブラシで擦って落としたり水槽内に生えたコケを落としたり、底のゴミを吸い取ったりします。
プールや水槽の水を抜いて掃除することもありますね(落水清掃と呼んでます)。
他にも、掲示物やお客様の通る通路、手すりや水槽の鑑賞面などを綺麗にし、来てくださった方が気持ちよく動物たちを見ていただける環境づくりも行なっています。
ただこれは飼育員に限らず水族館スタッフ全員が行なっていることでむしろ私たちは他部署のスタッフに助けられてる面もありますね。
・調餌
2つ目は調餌(ちょうじ)。
聞きなれない言葉かと思いますが、これは動物たちのごはんを作ることです。
魚たちやウミガメが食べる魚、リクガメが食べる野菜を切ったり海獣類やペンギンが食べる魚、カピバラが食べる野菜を選別したり、他にも餌やり体験用の魚や野菜を切ったりして動物に合わせたごはんを作っていきます。
ただごはんを作るだけではなく、例えば時期によって曲欲が上がることもあれば下がることもあるのでそれに合わせてごはんの量を調整するようにしています。
また時期だけでなく前日の食欲もよく見るようにし少しずつ増やしたり減らしたりすることもあります。
毎日魚を捌いているとスピーディーな三枚おろしを楽々こなせるようになります。
ただし、手からは常に魚のにおいがするようになります(笑)
・給餌
3つ目は給餌。
動物たちにごはんをあげることですね。
ただあげるだけではなく、誰がどん食べ方をしているのかやご飯への反応はどうだったかを観察するようにしています。
また、動物たちにとってごはんは大きな楽しみのひとつ!とはいえ、水族館で暮らす動物たちは野生動物たちと違い決まった時間にごはんを苦労することなくもらえるため考えることがなくなってきます。
それだとただ呆然と毎日が過ぎるだけなのでごはんの時間に考えながらごはんを食べられるよう毎日与える量に変化を加えたりいろんなところに隠してさがしながらたべたりできるようにしています。
お魚のごはんも口の大きな魚、小さな魚それぞれにごはんが行き渡るようサイズを変えながら与えています。
・洗い物
3つのじ以外にも基本というべき大切なことがあります。そのひとつが洗い物です。
汚れたバケツは衛生的にもよろしくないですしそれが原因で動物たちが体調を壊すなんてことあってはなりません。
おいしくごはんを食べてくれたことに感謝し、次も同じように食べてくれるよう丁寧に汚れを落として清潔にしておかなければなりませんね。
・健康チェック、観察
これもとっても大切なことですね。
水族館の仲間も命あるものなので病気になることだってあります。人間と違い言葉を発してくれないため症状が表に出る頃には病気がかなり進行していたなんてこともあるのですが、普段からよく観察することによって普通に見えるけど実は少しおかしい点などに気づきそれが病気の早期発見や対策にもつながります。
触った感じや歩き方泳ぎ方、ごはんの食べ方、皮膚の色などなど、とにかくよく観察して状態を把握すること、これが全てにおいて大切なことだと思います。
◆基本以外の業務
私たちのお仕事は上記の3つに留まりません。
表で行う業務もあれば裏で行う業務もあります。
・搬入と展示
私たちが採集に行くこともありますが、現在展示されている魚や無脊椎動物の多くは地元の漁師さんから頂いたものを展示しています。
連絡をいただくとタンクを積んだ軽トラに海水を入れ引き取りに行きます。
水族館にやってきた動物はそのまま展示水槽に入れてしまうともしかすると病気や寄生虫を持っていてそれが水槽内の他の動物に伝染する可能性もあります。そうなると最悪の場合展示水槽全滅もあり得るのでまずはバックヤードのストック水槽に入れて薬を使ったり淡水に入れたりして病原菌や寄生虫を落とします。
しばらく様子を見て問題がないと判断すれば展示水槽に移し皆様が目にすることとなります。
・POP、解説作り
水槽に動物が展示されればその生きものを紹介する解説板も必要となります。
私たちが来ていただくすべての方に動物のことをお話しできれば面白いことや豆知識などたくさんのことを伝えられますがそれは不可能ともいえます。
なので私たちが伝えたいことや動物のおもしろ豆知識などを紙に書いて魚名板や掲示物という形で館内に貼っております。
これを作るのも私たちの仕事ですが、ただ作ればいいというわけではありません。
来てくださるお客様がどういったものに興味を持ち何について知りたがっているのかを普段から見て聞いて取り入れるようにし、それを掲示物に反映させるようにしています。
気をつけなければならないのは「誤字脱字」や「誤った情報を流さないこと」。
最近は便利なアイテムが普及しているため文章の中で気になったワードがあれば簡単に検索し知ることができます。しかし情報というものは世に溢れています。その中に正しくないものや間違ったものがありそれを鵜呑みにして解説物を作ると水族館が間違った情報を流すのに加担したことになります。
それはあってはならないことなのでその情報が本当に正しいか確認に確認を重ねるようにしています。
また大人から子どもまで幅広い年代の方が読むものなので自身のクセがあるとはいえど時はなるべく綺麗に書き、これから字を習う子どもたちの見本になるよう誤字脱字にも気をつけねばなりませんね。
・トレーニング
水族館は野生と比べ考えることや運動する時間がどうしても少なくなってしまいます。
それらを解消するためにもトレーニングというものは有効です。
また例えば動物たちが怪我をしたとき、慣れていない状態でいきなり触ろうとすると当然怖がって暴れることはありますしそれが動物たちの負担にもなります。もし私たちが巻き込まれればこちらが大きな怪我をすることになるでしょう。
しかし普段からトレーニングを行うことによって健康チェックの際自発的に体を見やすい姿勢でいてもらうことができますし、飼育員・動物の双方が安全に健康チェックや治療を行うこともできます。
動物たちの派手な行動や意外な行動が見られるだけでなく、トレーニングにはこういった大切な役割があるんですね!
・イベント企画、対応
動物たちのことをもっと深く楽しく知ってもらう機会として特別なイベントを行うこともあります。
例えば飼育体験やツアーなど、私たちが直接お客様に動物のことを伝えられる大切な機会です。
そのイベントをすることによって何を伝えたいのか、何を知っていただきたいのかについてあれこれ考えながら内容を詰めていきイベント中もお客様の反応を見ながら臨機応変に対応していきます。
ワークショップや飼育動物が直接絡まないイベントでも私たちの仕事のひとつです。
・広報活動
桂浜水族館には「おとどちゃん」という絶大的な広報力を誇る女の子がいますが、私たちも「飼育員」という目線から動物たちのあれこれについてお伝えする活動を行っております。
現在私たち飼育員が主に行っているのはYouTube、Instagram、そしてこのnoteですね。
動物たちの普段なかなか見せない行動を間近で見ることができ、それを広く伝えていくというのは飼育員だからできることでもあると思います。
担当するスタッフによってメインとなる動物や話の内容などは異なりますが、それぞれが個性を出して動物について発信しておりますのでよろしければぜひチェックしてみてください!
・講義、教育活動
普段の飼育業務も毎日続けていれば多くの記録が積み重なっていきます。
その飼育記録やトレーニングについて教育機関に講義しにいくこともあります。
また、専門学校や大学から当館に来る実習生や中高の職場体験で来る生徒の受け入れも行い現場での指導に当たっています。
動物について専門的に教えることやこの業界をこれから背負っていく後輩、動物に携わる人材を育てていくことも動物に携わる仕事をしている私たちの役目です。
◆水族館はみんなの力で回っている
まだまだ他にも私たちのお仕事はありますが、飼育員はこういった業務に携わっています。
しかし、私たちがいるから水族館が回るというわけではありません。施設の長である館長やお金の管理、広報、営業面等で水族館を支える事務局スタッフ、水族館の思い出をお土産という形に変えてお届けするストアスタッフ、おいしいごはんを提供するフードスタッフ、館内の異常や故障を修理する設備スタッフ、そしてともに働く動物たちがいてはじめて水族館は成り立ちます。
また、来てくださるお客様が大勢いらっしゃり動物たちが元気でいてくれるおかげで私たちはこうして働くことができています。
その感謝の気持ちを忘れてはいけませんね。
◆みんなで水族館に行こう!
以上が私たち飼育員のお仕事についてです。
私を含め数名は「学芸員」という役職で仕事をしており飼育員とかぶる部分もありますが学芸員には学芸員固有のお仕事もあります。
桂浜水族館は動物、お客様、スタッフとの距離が近いことを特色としているため飼育員について知っていただける機会はある方だと思いますが、飼育員の目標は普段会えない生きた動物を間近見て息づかいや匂い、鳴き声、行動などから動物について興味を持ち、理解を深め、自然や命あるものへの敬意を育むことだと私個人は思っています。そしてそれは水族館が水族館として活動する目的でもあると思います。
ただ最初のきっかけは何からでも大歓迎です!
見た目がおもしろい、おいしそう、迫力ある動きがすごかった、魚名板がおもしろかったなど何からでも大歓迎!
興味を持っていただけて「好き!」という気持ちが芽生えればそれはいずれ「もっと知りたい!」という気持ちに変わり、それが膨らむと見える世界はどんどん広がっていきます。
広がった視野は水族館の動物のみならず野生動物の現状についても見つめることができ、それを知ることによって数が減っている動物をどう守っていくかについて考えるきっかけにもつながります。
そのためにも身近なところで身近ではないところに住む動物たちに会える水族館のような施設は重要なのではないかと私は思います。
なのでお一人でもご家族、おじいちゃんおばあちゃん、カップル、友達とでも水族館へぜひ遊びにきてください!
水族館で私たちと一緒にあなたの興味の扉を開いてみませんか?
飼育学芸員 フジ
(ペンギン、魚類、学芸、教育担当)