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「私が経験したこと~地元の捨て猫問題~」

〈動物愛護週間3日目〉
◆動物は自然の中であればどこでもいいってわけではない。
◆「自然の中で元気でね」はただ苦痛を与え周りに迷惑をかける行為。

このnoteで何度か書いてきましたが、私の育ったところは近くに山があり川が流れ、集落の周りを田んぼが囲い、野生動物を見かけることもあるのどかな田舎です。

野鳥やキツネは比較的見る機会の多い野生動物で、山に行けばイノシシもいますし、私が小学校の頃は野犬がいて登下校時には注意が呼びかけられることもありました。
野犬は私が小学生だった頃に少しずつ数が減り話を聞くことはなくなりましたが、野良猫は何年経っても日常に溶け込んだ存在でしたね。

この野良猫たちですが、ある時ふらっと現れたものもいれば子ネコのときに他所の地域から捨てに来られたものもいました。辛い現実ですが多かったのは後者ですね。

田舎の良いところというべきなのかどうなのかわかりませんが、近所付き合いが濃いおかげで誰がどんな車乗ってるのかとか把握している人が多く、しかも夜になると周りが真っ暗になるため昼間畑仕事をする人以外は基本近づかないところに見知らぬ車が停まってるとすぐ話題になるんですよね。そして翌朝不審な車が停まっていた場所を見に行くと大抵子ネコが捨てられているか畑が荒らされて野菜が盗まれているかのどちらかでしたね・・・💦

子ネコは集落から少し離れた田んぼの中にある納屋や資材置き場、山に箱ごと捨てられていることが多く、発見時点で多少弱っていても自分でミルクを飲める力が残っているのであれば保護して回復するようお世話しその後も大切に飼養することはできるのですが、手遅れで弱りながら息絶える姿を見ることもあればすでに冷たくなっているようなこともありました。

自身の経験だけでなくそういった話も身近でよく聞いていたため少なくない数の子ネコが捨てられていたのだと思いますが、なぜこんな簡単に動物を捨てられるのか全く意味が分かりませんでした。
しかしいろいろ考えてみて、あえて自然の多い地域を選ぶ理由には「動物は街中より自然の中の方が生きやすいんじゃないか」って思い込みがあるからなのではないかと思うようになりました。

古くから何世代にもわたってその環境の中で生きてきた野生動物たちであれば自然の中で生きていくことはできますね。
ただしイヌやネコのように人間と暮らしてきた歴史も長く家族同様の存在となっている伴侶動物(コンパニオンアニマル)はどうでしょうか?
同じ「動物」だからといっていきなり過酷な自然の世界に放り込まれてみんながみんな無事成長できるとは限りませんし、自然のサイクルの中で野生動物が亡くなるのと人の身勝手な行動によって捨てられた動物が自然の世界で亡くなるのとでは訳が違います。
それでも運良く生き残ることのできるものはいますし、そういったものは野良猫として自分の力で過酷な自然の世界を生き抜いていくことになります。
しかし本来その環境にいなかった存在である野良猫たちが生きるために他の小動物たちを食べたらどうなるでしょうか?
肉食動物であるネコが他の動物を食べるのは当たり前?

自然というのは何十年何百年にもわたって野生動物たちの食う食われるという関係が築かれ、その絶妙なバランスによってその地域の生態系が成り立っています。
そこに外部から別のものが放り込まれて元からいた野生動物を食べたりすみかを奪ったりするようになると当然このバランスは崩壊しますよね。この先にあるのが外来種問題です。
それが巡り巡って私たちの生活に影響を及ぼすこともありますし、何より崩壊した生態系は簡単には戻せません。

「自然の中で元気に生きてね」
「誰かいい人に巡り会えるといいね」
そうやって捨てられたネコは飢えや孤独、死と隣合わせの恐怖・苦痛に耐えながらも懸命に生きようとします。生きようとした結果その地域の外来種として元からそこにいた野生動物たちの生存を脅かす驚異的な存在となります。私の経験上、ネコを例に書いてきましたが他の動物にでもいえることですね。
ちなみに動物を捨てることは犯罪で、違反者には動物愛護管理法違反として1年以下の懲役または100万円以下の罰金が課せられます。

愛護動物を遺棄した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

動物愛護管理法第44条3項

📖愛護動物とは
動物愛護管理法における愛護動物とは、牛、馬、豚、綿羊、山羊、イヌ、ネコ、イエウサギ、鶏、イエバト、アヒルや、その他人間が占有する哺乳類、鳥類、爬虫類のことをいいます。

法律はある程度の抑止力となりますが、「犯罪者になりたくないから捨てない」だけでなく、飼育を始めたのであれば最後のその時まで飼い主として責任を持ってその命と向き合い続ける、この気持ちと覚悟を強く持って生きることが大切ですね。

飼育学芸員
フジ