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そもそも『絶滅危惧種』って?

前回の記事はこちらです。


今回は絶滅危惧種について前回より詳しくふれていきます。


◆レッドリストってなんだ?

絶滅危惧種は絶滅の恐れが極めて高い動植物のことでしたが、地球上に生息する生物を調査し絶滅危機の度合いによってランク分けしてまとめたものがあります。これはレッドリストと呼ばれます。(色的に危険な生物をまとめたかのような名前のリストですが、そういったものではありません💦)

ちなみに、レッドリストに掲載された生物の生息状況や生態、絶滅危惧の原因などをまとめたものも存在し、こちらはレッドデータブックと呼ばれます。

◆IUCNレッドリストとカテゴリー

国際的なレッドリストは国際自然保護連合(International Union for Conservation of Nature and Natural Resources 、IUCN)が作成しており、種ごとに危機の度合いをカテゴリー分けして掲載しています。

IUCNレッドリストのカテゴリーは以下の通りです。

上の画像でも書いています通り、「CR(深刻な危機)」「EN(危機)」「危急(VU)」のカテゴリーに掲載されているのが絶滅危惧種といわれている種です。レッドリストに記載されているのは地球上に生息する生物のうち絶滅の危険度について調査、評価が行われた種であるため、ここに記載されている種すべてが絶滅危惧種というわけではありません
現在、約16万3000種の評価が行われており、このうち絶滅危惧種と評価されている種は45,000種を超えています。
ただし「データ不足」「未評価」に掲載されているものの中には生息数が少ない種もいるかもしれませんし、調査の進展によっては先述の数が変化する場合もあります。

ちなみに世界ではジャイアントパンダやレッサーパンダ、コアラ、ホッキョクグマ、クロマグロ、アジアアロワナ、ケヅメリクガメ、フンボルトペンギン、コツメカワウソといった生きものたちが絶滅の危機に瀕しています。
太字は当館でも飼育している動物ですが、ほかにも多くの方がご存知の生きものたちがこのままでは地球上からいなくなってしまうかもしれません。

◆他のレッドリスト(例:環境省レッドリスト)

レッドリストはそれぞれの国や地域が作成したものもあり、日本では環境省が作成したものや各都道府県が作成したものなどが存在します。
一例として、環境省レッドリスト(絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト)を見てみましょう。
こちらは日本国内に生息または生育する野生生物について絶滅の危険度を評価しリストにまとめたものです。

環境省レッドリストにおける絶滅危惧ⅠA類はIUCNレッドリストの「深刻な危機」ⅠB類「危機」絶滅危惧Ⅱ類「危急」に相当します。

環境省版レッドリストでは、絶滅危惧Ⅰ類絶滅危惧ⅠA類絶滅危惧ⅠB類)、絶滅危惧Ⅱ類に掲載されているものが絶滅危惧種といわれる種です。

環境省レッドリスト(2020)においては、次のような種が絶滅危惧種と評価されています。

絶滅危惧ⅠA類
ジュゴン、ツシマヤマネコ、ラッコ、コウノトリ、トキ、ヤンバルクイナ、ミヤコカナヘビ、トサシミズサンショウウオ、イタセンパラ、アユモドキ、ニッポンバラタナゴなどなど

絶滅危惧ⅠB類
アマミノクロウサギ、オガサワラオオコウモリ、ライチョウ、ヤイロチョウ、イヌワシ、アカウミガメ、タイマイ、アカイシサンショウウオ、オキナワイシカワガエル、ニホンウナギアカメ、オヤニラミなどなど

絶滅危惧Ⅱ類
トウキョウトガリネズミ、ヤマコウモリ、アホウドリ、マナヅル、ハヤブサ、アオウミガメ、オオサンショウウオ、カスミサンショウウオ、カワヤツメ、アカザなどなど

※太字は当館でも飼育している動物です。

環境省レッドリストは、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、汽水・淡水魚類、昆虫類、貝類、その他無脊椎動物、維管束植物、蘚苔類(せんたいるい)、藻類、地衣類、菌類の分類群ごとに作成が行われています。
上で書いたのは哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、汽水・淡水魚類の分類群に掲載されている絶滅危惧種のごくごく一部ですが、一度は目にしたことある名前の種も多いのではないかと思います。

◆レッドリストの活用

レッドリストに法的拘束力はないため、ここに記載されたからといって直ちに捕獲や採取が規制されるといったわけではありません。
しかしレッドリストは科学的根拠に基づく調査によって野生生物種ごとの絶滅の危険度を明らかにしたものであり、私たちの身近なところにいた種が気づかぬうちに数を減らしていたとき、私たちはその現状を知ることができますしそういった野生生物に対する理解を深めるきっかけにもつながります。また、貴重な野生生物たちをこれ以上減らしてしまわぬよう地域や国で保護・保全を進めていく際にも活用できる非常に重要な資料といえますね。

もし機会がありましたら皆さまがお住まいの都道府県が作成するレッドリストや環境省のレッドリストなどをご覧いただき、身近な生きものたちの現状に触れてみてください。
さらに情報を知りたいという方はレッドデータブックにも目を通してみてください!

◆身近な絶滅危惧種を知る・守る

世界中の生きものに目を向け、どうやったら守っていけるのかについて考えることはもちろん大切です。
大切なことですが、まずは私たちが住む国や地域の絶滅危機に瀕している生きものたちについて考えていくことが先決とも思えます。

たとえば日本のように四方が海に囲まれた島などには独自の進化を遂げた生きものもおり、世界中でその地域にしか住んでいない生きものは固有種と呼ばれます。
日本に住む固有種の一例を挙げると、ニホンザルやムササビ、ヤンバルクイナ、アカメ、ビワコオオナマズ、アオダイショウ、ニホンイシガメ、バイカオウレンなどがいます。
世界中で日本にしかいない生きものたちの住む環境がそこにあるって素晴らしいことだと思うのですが、そういった生きものたちは生息地が限定されているゆえその場所が失われれば生存も困難となります。

同じ日本に住んでいるのにはじめて名前を聞いた生きものはまだまだたくさんいますし、現状をはじめて理解したって生きものもたくさんいます。
ただ悲しいのは身近なところにいたにも関わらず名前も現状も知らず、いなくなってはじめてその存在を知ったという生きものがいてしまうことだと思います。

そういった生きものが増えないためにも私たちはすぐそこの現状に目を向けていかなければなりませんし、そういった生きものがいることをもっと広く伝えたり生息環境をきれいに守っていくなどできる活動から始めたりしていかなければなりませんね。

飼育学芸員
フジ