あの日までの道のり、あの日からの道のり「(12)へとへとな毎日」
「涙の数だけ強くなれるはず」
ついに水族館への就職が叶った私。
しかし喜んだのも束の間。
出社日まで2週間ほどしかありません。
旅行から帰ってすぐ退職の手続きを済ませ両親と高知へ向かいました。夜中に出て車の中で仮眠し朝に到着、そして家を探したり家電を買ったりしてその日のうちに帰る、それを2往復半行いなんとか新生活を迎える準備は整いました。高知から帰ってきて次行くまでの間に改めての報告やお礼を兼ねて大学やお世話になった博物館、友人らのもとを訪れ新たな門出を盛大に祝っていただきました。
多くの方々に支えられいざ高知へ。
そして初の一人暮らしスタート。
初出勤日、魚類と学芸担当で入社した私ははじめに魚類の業務についての案内を受けました。
早速ですが覚えることは盛りだくさん。頭も使うし体も使う、ゆっくり考え込んでいる時間はありませんが考えて行動しなければ重大な結果を招いてしまう、大変な職だと覚悟はしていましたが想像以上でした。
ふらふらになって自分たちの事務所へ行ったところ、副館長(現館長)と当時いた先輩学芸員さんが何やら話をしていました。
入社前、自分も含めて新たなことに挑戦していくと聞いていましたがさてはそれのことか。
一応話は理解しておいてほしいと言われたため途中から同席していましたが、話が終わったあと先輩から「これ、君の仕事だから」とその責任を全て与えられました。
入ったばかりでまだスタッフさんの顔と名前すら一致していない状態、飼育業務もまだまだ習っている途中なのにいきなりそんな館を背負うことド新人にやらせていいのか?
けど与えられたことはやってみるしかないとその仕事を始めたのですが、何をどうしたらいいのかなんてすぐにはわかりません。なので先輩に聞いてみますが「自分にもわからないので・・・」と返ってくるばかり。
結局、いきなり与えられた仕事はどう進めるのかや学芸員としての仕事についての引継ぎらしい引き継ぎはなく、先輩は私が入社してから2ヶ月後くらいに退職していきました。
完全に1人となってしまったため、いろいろ調べて知識をつけまずはそれに打ち込みたいところですが入ったばかりですし飼育業務も覚えていかなければなりません。
右も左もわからん状態で飼育業務と学芸業務の板挟み。
どちらかを優先するともう片方が疎かになることは頭では分かっていましたが未経験で入りたての自分に両立なんて器用なことはまだまだできませんでした。
なのでたくさん怒られ悩み動いては上手くいかず凹んで涙を流す毎日。
たまに飼育か学芸のどちらかで上手くいってこの調子で頑張ろう!と思ったらもう一方が遅れてしまい両立の難しさに頭を抱える、入社1年目はそんな日々を送っていました。
心身ともにへっとへと。
せっかく目指していた業界に入れたのに続けていけるかどうか正直不安でした。
《(13)に続く》